の美的理性をも入るべきである。
[#ここで字下げ終わり]


     第十章 人生に於ける詩の概観


 詩の本質するものが、それ自ら「主観的精神」であることは前に述べた。ではこの主観的精神、即ち「詩」は人生のどこにあるだろうか。そして此処《ここ》に人生と言う意味は、人間生活の文化に於ける、価値の顕揚されたものについて言うのである。吾人《ごじん》はこの章に於て道徳、芸術、宗教、学術等の一切にわたる詩的精神の所在を概観しよう。
 始めに先《ま》ず、道徳的精神について考えよう。道徳的精神はどんなものでも、本質に於て一種の詩的精神であり、詩という言語の広い所属に含まれてる。なぜなら倫理感の本質は、それ自ら感情としてのイデヤを掲げる、主観的精神に外ならないから。特に就中《なかんずく》、愛に於ける情緒の如きは、恋愛と結んで抒情詩《じょじょうし》の根本のものになっており、人道と結んで主観主義文学――例えば浪漫派など――の主要なモチーヴとなっているほどだ。愛以外の他の道徳感も、すべて人の胸線に響を与え、普遍的なる精神のひろがり[#「ひろがり」に傍点]を感じさせる。即ちすべての倫理感は、本質上での美
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