詩の原理
萩原朔太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)殆《ほとん》ど

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)文壇的|人非人《にんぴにん》として

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おどおど[#「おどおど」に傍点]した

*:注釈記号
 (底本では、直後の文字の右横に、ルビのように付く)
(例)されば*リズムや韻文やの
−−

     序


 本書を書き出してから、自分は寝食を忘れて兼行し、三カ月にして脱稿した。しかしこの思想をまとめる為には、それよりもずっと永い間、殆《ほとん》ど約十年間を要した。健脳な読者の中には、ずっと昔、自分と室生犀星《むろうさいせい》等が結束した詩の雑誌「感情」の予告に於《おい》て、本書の近刊広告が出ていたことを知ってるだろう。実にその頃からして、自分はこの本を書き出したのだ。しかも中途にして思考が蹉跌《さてつ》し、前に進むことができなくなった。なぜならそこには、どうしても認識の解明し得ない、困難の岩が出て来たから。
 いかに永い間、自分はこの思考を持てあまし、荷物の重圧に苦しんでいたこ
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