実に吾人の痛感するあらゆる不運は、現代の混沌たる日本文明そのものに原因している。今日の我が国は、過去のあらゆる美が失われて、しかも新しい美が創造され得ない、絶望悲痛のどん底に沈んでいる。この不運に際して悲しむものは、独《ひと》り吾人の詩人のみでない。第一「新しき国語」の無いために、日本の小説そのものが堕落している。実にこれを明言しよう。近き文壇に於ける我が小説の低落は、彼等がその芸術的に訓練されない猥雑《わいざつ》の口語文を以てした為に、外国文学に見る如き高貴な詩人的の心を失い、江戸文学の続篇たる野卑俗調の戯作《げさく》に甘んじ、一歩もそれから出ることができなかったのだ。
故に今日の問題は、何よりも先《ま》ず「国語」の新しき創造である。国語にして救われなければ、詩も小説も有りはしない。この時、この場合、吾人は暫《しば》らく「韻文」「散文」の言語を止めよう。なぜなら詩の言語は、文化の最後に咲く花であり、混沌たる今日の時代のものに属しないから。今日の最大急務は、詩の言語を考えることでなくして、先ずその根柢《こんてい》たるべき日常語を改訂し、これを導いて芸術化し、以て第一に「散文学」そのも
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