オの恋愛詩が代表している。そして前者が、かの歴山《アレキサンドル》大王やシーザアやの、古代の英雄によって愛誦《あいしょう》され、彼等の少年時代に於て、早くそのヒロイックな権力感情を養成した時、後者はより[#「より」に傍点]民衆的な青年の間に読まれ、幾多のセンチメンタルな恋愛主義者を養成した。そしてこのホーマーとサッホオとの対立が、後に文芸復興期に移ってから、さらにダンテやミルトンの荘厳な神曲叙事詩と、一方にペトラルカやボッカチオ等の、民衆的な情痴抒情詩の対立になったことは、前に同じ章で述べた通りである。
 実にこの叙事詩《エピック》と抒情詩《リリック》の対立は、人間に於ける二つの感情――情緒と権力感情――との二大分野を示すもので、人文の歴史がある限り、たといその形式は変貌《へんぼう》しても、実質的には何等かの新しき様式で、不易に対立すべきものである。しかしながら時代と文明の変移によって、或る時には一方の者が「正流」となり、他方のものが「反動」となることが珍らしくない。そしてこの場合に、反動の地位に置かれたものは、その表面の意志を抑圧される結果として、或る変形したる、歪《ゆが》みたる、逆
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