れている。或る人は叙事詩を女性、抒情詩を男性と言い、或る人は反対に叙事詩の方が男性だと主張している。かく人によって意見が異なるのは、叙事詩に対する解釈がちがうからだ。即ち一方では、それが表面的に「事件を叙述する詩」と解され、一方では同じ言語が、詩の本質的な特色からして、英雄感的のものと解されている。
 そこで前者の語解によれば、叙事詩は女性的のものに見られてくる。(なぜなら女性というものは、すべて事件の細々《こまごま》とした描写を好むもので、真の抒情詩的表現を持たないから。この意味でなら女の詩は、素質的に皆叙事詩である。)反対に後の解釈では、叙事詩が男性に属してくる。著者はこの書物に於て、性の本質上の特色――即ち後の方の意味――で、以下叙事詩という言語を使用する。
[#ここで字下げ終わり]


     第五章 象徴


        1

 文壇という世界は、いつも認識上に霧のかかった、不思議な朦朧《もうろう》とした世界である。そこでは絶えずいろいろな観念が創造され、いろいろな言語が使用されるにかかわらず、一も意味のはっきり[#「はっきり」に傍点]とした解釈がなく、定義の確立した観
前へ 次へ
全334ページ中191ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
萩原 朔太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング