険談、戦争談であって、その情操は雄大、荘重、典雅、豪壮等の貴族的尊大性を高調している。これに反して抒情詩《リリック》は、主に恋愛や別離を歌い、その情操は哀傷的、情緒的で、優美にやさしく涙ぐましい。故にリリカル(抒情詩的)という言葉は、常に哀傷的で涙ぐましい情緒を指してくる。反対にエピカル(叙事詩的)は、意志の強く、尊大で思いあがった、闘士的、英雄的な興奮を言語している。尚換言すれば、前者はメロディアスの気分であり、後者はリズミカルの気分である。
古代希臘に於ける、この叙事詩《エピック》と抒情詩《リリック》との特殊の対立――それはホーマーとサッホオによって代表されている――は近世の文芸復興期に至っても、同じ精神の流れを汲《く》んで伝承してきた。即ち叙事詩にはダンテやミルトンのような詩人があり、抒情詩にはペトラルカやボッカチオの類の詩人がいた。そして前者の詩材は、主に神学、宗教、哲学に関する超現世的|瞑想《めいそう》風のもので、その情操は、やはり荘厳、雄大、典雅、荘重の形式ぶった貴族趣味を高調した。これに反して後者の詩材は、主に恋愛その他の現世的な生活実相から取ったもので、俗にくだけた、
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