表現は「情象」である。西洋のバレー、パントマイム、オペラ、日本の能楽、歌舞伎劇等は、その脚本の韻文――即ち劇詩――と共に、前者に属すべきものであろう。
 しかしながら西洋の古典詩中、いろいろな意味で叙事詩《エピック》の対象となるべきものは、実に女詩人サッホオ等に代表される抒情詩《リリック》である。この「叙事詩」と「抒情詩」とは実に西洋詩の二大|範疇《はんちゅう》と言うべきもので、古典韻文の既に全く凋落《ちょうらく》した近代に至っても、尚《なお》或る変貌《へんぼう》した形に於て、本質上から互に対立している有様である。おそらくこの二つの詩派の対立は、永遠に世界の終るまで、避けがたく両立する二大系統であるだろう。しかしこの解説は後に譲り、尚表面上の説明を続けて行こう。
 古典韻文としての抒情詩《リリック》は、形式に於ても内容に於ても、大体ほぼ叙事詩《エピック》に類している。しかしながらただ、或る一の相違で名称を異にしている。その根本的なる相違は、叙事詩《エピック》が*男性的であるに対し、抒情詩《リリック》が女性的であるということである。即ち詳説すれば、叙事詩《エピック》の詩題は主に英雄談、冒
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