知る通り、叙事詩《エピック》とは神話や歴史の伝説を、韻律の形式で歌ったもので、つまり言えば一種の韻文物語であり、音律を以て語られた歴史である。だが真の学術的な歴史と叙事詩とは、様式の根本精神に於て異っている。歴史の書こうとする精神は、何よりも事実の正確な記述にある。即ち歴史家の認識は、事件について事件を見、現象について現象を見ようとするところの、真の客観的な態度である。これに反して叙事詩は、主観によって事実を見、感情の高翔《こうしょう》した気分によって、歴史を詠歎《えいたん》しようとするのである。即ち一言で言えば、歴史は事実を「記述する」ので、叙事詩はこれを「情象する」のだ。そして詩と歴史の別れるところが、実にこの一点にかかっている。(前章参照)
序《つい》でながら、此処で小説と歴史、小説と叙事詩の区別を述べておこう。けだし小説は、人生に於ける或る物語を描くのであるから、言語の広い意味に於て、一種の創作的な歴史、もしくは散文の叙事詩と思惟《しい》することができるだろう。のみならず小説は、他のより[#「より」に傍点]本質的な特色から、叙事詩と共通した精神に立ってさえいる。それで或る人々
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