である。彼等は当時の科学思潮と唯物観とを信奉して、ひとえに懐疑的態度を取り、前代浪漫派の楽天観に反対した。そしてこのニヒリスティックな人生観から、社会のあらゆる道義観や風俗に挑戦《ちょうせん》し、故意に人生の醜悪を描き、人間性の本能を高調し、隠蔽《いんぺい》されたものを引っぺがし、性の実感的|卑猥《ひわい》を書き散らした。
されば自然主義の出発点は、始めから人間主義者《ヒューマニスト》的な逆説感に立っていたので、つまり言えば「道徳に反対する道義主義」であったのだ。此処で読者は、前章に述べたことを再考されたい。前章に於て、自分は倫理的情操に於ける二種のものを説明した。即ち「愛」をモチーフとする道徳感と、「義」をモチーフとする道徳感で、前者は女性的に涙もろく、後者は男性的に反撥《はんぱつ》することを特色し、しかも両者は一つの倫理線で相対している。自然主義の倫理感は、もちろん言うまでもなく、この後のものに根拠している。彼等の意志は、浪漫派の感傷道徳に反対して、他の懐疑的な見地に於ける、別の正義感を叫んでいたのだ。それは「没道徳」の態度でなくして、正しく「反道徳」の態度であった。(前章、章尾
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