と云ふ人の助力のもとに極く藝術的に組織すると云ふ事を長く述べ立てた。さうして、女優は品行の正しい身性《みじやう》のあまり卑しくないものばかりを選むつもりだと云つた。滑かな大坂辯が暑い空氣の中に濁りを帶びて、眠たい調子をうね/\とひゞかしてゐた。
小山は話しをしてる間に、少しは分つた事を云ふ女だと云ふ樣な顏をして、時々みのるの言葉に調子を乘せて自分の話を進めて行つたりした。
「然う云ふ御熱心なら、一度よく酒井先生とも行田先生とも御相談をいたしまして、其の上で御返事を差上げると云ふことに。多分よろしからうとは思ひますが私一人の考へ通りにも參りませんによつて、あとから端書を差上げると云ふ事にいたしませう。」
みのるはそれで小山に別れを告げて外に出た。
誰もゐない家の軒に祭りの提燈がたつた一とつ暑い日蔭の外れに搖れてゐるのを見守りながら、みのるが漸《や》つと家へはいつた時は、もう庭の上にも半分ほど蔭ができてゐた。みのるは汗になつた着物も脱がずに開けひろげた座敷の眞中に坐つて何か考へてゐた。
夜るになつてみのるは義男と祭禮のある神社へ參詣に出かけた。墓塲を片側にした裏町には赤い提燈の灯が
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