u建築」に傍点]において、「いき」はいかなる芸術形式を取っているか。建築上の「いき」は茶屋建築に求めてゆかなければならぬが、まず茶屋建築の内部空間および外形の合目的的形成について考えてみる。およそ異性的特殊性の基礎は原本的意味においては多元を排除する二元である。そうして、二元のために、特に二元の隔在的《かくざいてき》沈潜のために形成さるる内部空間は、排他的完結性と求心的緊密性とを具現していなければならぬ。「四畳半《よじょうはん》の小座しきの、縁《えん》の障子《しょうじ》」は他の一切との縁を断って二元の超越的存在に「意気なしんねこ四畳半」を場所として提供する。すなわち茶屋の座敷としては「四畳半」が典型的と考えられ、この典型からあまり遠ざからないことが要求される。また、外形が内部空間の形成原理に間接に規定さるる限り、茶屋の外形全体は一定度の大きさを越えてはならない。このことを基礎的予件として、茶屋建築は「いき」の客観化をいかなる形式において示しているであろうか。
 「いき」な建築にあっては、内部外部の別なく、材料の選択と区劃の仕方によって、媚態の二元性が表現されている。材料上の二元性は木材
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