ニ竹材との対照によって表わされる場合が最も多い。永井荷風は『江戸芸術論』のうちで次のような観察をしている。「家は腰高《こしだか》の塗骨障子《ぬりぼねしょうじ》を境にして居間と台所との二間のみなれど竹[#「竹」に傍点]の濡縁《ぬれえん》の外《そと》には聊《ささや》かなる小庭ありと覚《おぼ》しく、手水鉢《ちょうずばち》のほとりより竹[#「竹」に傍点]の板目《はめ》には蔦《つた》をからませ、高く釣りたる棚の上には植木鉢を置きたるに、猶《なお》表側の見付《みつき》を見れば入口の庇《ひさし》、戸袋、板目なぞも狭き処《ところ》を皆それぞれに意匠《いしょう》して網代《あじろ》、船板、洒竹[#「洒竹」に傍点]などを用ゐ云々」。かつまた、「竹材を用ゆる事の範囲|並《ならび》に其《そ》の美術的価値を論ずるは最も興味ある事」であると注意している。およそ竹材には「竹の色|許由《きょゆう》がひさごまだ青し」とか「埋《うめ》られたおのが涙やまだら竹」というように、それ自身に情趣の深い色っぽさがある。しかし「いき」の表現としての竹材の使用は、主として木材との二元的対立に意味をもっている。なお竹のほかには杉皮も二元的
前へ
次へ
全114ページ中85ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
九鬼 周造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング