《むじおもて》、裏模様《うらもよう》」の渋味、すなわち趣味としての渋味は、甘味を止揚したもので、第三段たる「合」の段階を表わしている。
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     四「いき」の自然的表現

 今までは意識現象としての「いき」を考察してきた。今度は客観的表現の形を取った「いき」を、理解さるべき存在様態と見てゆかねばならぬ。意味としての「いき」の把握《はあく》は、後者を前者の上に基礎附け、同時に全体の構造を会得する可能性に懸《かか》っている。さて「いき」の客観的表現は、自然形式[#「自然形式」に傍点]としての表現、すなわち自然的表現と、芸術形式[#「芸術形式」に傍点]としての表現、すなわち芸術的表現との二つに区別することができる。この両表現形式がはたして截然《せつぜん》たる区別を許すかの問題{1}、すなわち自然形式とは畢竟《ひっきょう》芸術形式にほかならないのではないかという問題は極めて興味ある問題であるが、今はその問題には触れずに、単に便宜上、通俗の考え方に従って自然形式と芸術形式との二つに分けてみる。まず自然形式としての表現について考えてみよう。自然形式といえば、いわゆる「象徴的感情
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