ならば斯樣な馬鹿なことを言ふもので無い。是には事情がある。――喋々せぬでも御察しの事であると思ふ。斯樣な譯で、今日まで農商務省の取扱と云ふものは、知らないのか、學問が無いのか、惡い事をするのか、實に言語に絶えた次第でござりまする。北海道の開墾地は何年の星霜を經てどれだけの田地が出來ましたか。明治四年から始めて漸く九萬町が聊か缺けて居る。其内納税地が七ン町ばかりあるが租税と云ふは名ばかりである、何にせよ收穫がありやしない、是に費す所の金は數千萬圓、北海道に斯の如く金を入れるかと思へば、關東で一番良い地面一段百五十圓二百圓と云ふ地面をどん/\潰すことは一向知らぬ顏して居る。物の偏頗と云ふものは、斯の如き結果になる。
 是より鑛毒の恐るべき大害であると云ふ御話を少こし致します。――先づ鑛毒で植物が枯れる。魚が取れぬ。人の生命が縮まる。斯樣な譯で、銅山に毒があれば動植物に害を與へると云ふことは古來學者の定論で、農商務の官吏が皆正直でさへあれば其れで宜しいのである。學者の定論があるにも拘らず、妙な考からして分らなくしてしまうのである。先づ近き例を申せば、明治廿五年農科大學の試驗の成績はどうである
前へ 次へ
全44ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 正造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング