水の氾濫十年前に數倍せり。而も政府の之を默視する理由如何。
一、土地建物鑛業に侵され、爲に譜代の財産を失ひ日々貧窮に迫れる人民は、如何にして之を處分するや。
一、以上の現状より沿岸被害人民は衣食足らず禮節修らず。政府は何を以て國民の義務を守らしめんとするか。
一、本員等は鑛毒浸漸の極多數人民の公益を侵害すること如此深大ならざるに先ち、多年屡々政府に向て忠告を與へたり。然るに當局者は種々の遁辭を以て一時を瞞過せんとし、姑息遷延以て今日に至り、其慘状殆ど挽囘し得べからざるの點に達せしめたり。政府は如何にして被害人民の生命財産權利を囘復せんとするや。
一、鑛業條例第十九條第一項には、試掘若くは採掘の事業公益に害ある時は、試掘に就ては所轄鑛山監督署長、採掘に就ては農商務大臣、既に與へたる認可又は特許を取消す事を得と明記せるに拘らず、政府は此公益に大害ある鑛業を停止する事を爲さず、被害地十餘萬の人民獨り帝國憲法の庇護を受くる能はざるの理由如何。
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右議院法第四十八條に依り質問す、國務大臣は帝國憲法第五十五條により責任を以て明確なる答辯あらんことを望む。

        
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