死滅したもので、其土を掘出し片隅に山を築き、一方を畑に致す――新に買入れるよりも高くなると云ふ計算で、經濟上から言へば丸で問題にならぬ。
次は鑛毒の爲に年貢を下げなければならぬことである。栃木群馬茨城埼玉諸縣鑛毒地の年貢を下げ又た免租もしてやらなければならない。一體水害地方と云ふものは、常に水害を被ぶるからして地價は安く出來て居る。其れ故尋常の水害ならば地價を下げるに及ばないが、毒と云ふものが這入りますれば地價を下げなければならぬと云ふことが出來る。外の荒地なれば五年十年で起返りますけれど、毒の這入つた砂のやり場が無いから、若し堤防を築き鑛業を停止しましても、此田地は最早死んだもので、是は開墾の名義にしましたなれば又幾らか田地になるかと云ふに過ぎないのであります。最早今日までに沙漠となつてしまつた地面が千六百町もあるのでございます。三萬町以上の中で捨てゝ置けば皆な然うなつてしまふ。俄になるのではございませぬ、まだ五年と六年と間はあるけれども、今日其を差止めなければ矢張皆惡るくなつてしまふ。此の免租減租を致しまするに就ては、租税のことに心配をする當局者もございませうから參考に申して置き
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