ますが、一體此の渡良瀬川沿岸と云ふものは地味が肥えて居て地價が安い――水害地だから。灌漑用水の方は地價金が高い。其れで賣買値段を申しますると灌漑用水の方は賣買が安い。此の水害地の方の堤外地と申して此の土手の外にある地面は、元と二百圓の取引であつたものが、其れが一圓二圓でも賣買が無いやうになつて居る。元來川の沿岸は浸水を受けると同時に、深山の木の葉が落ちまして、此葉が腐れて洪水の時に流出して田地に注ぎ肥料となるから、洪水が出ますると同時に田地が良くなり、又た冬先に至ては麥作も能く出來た。所が今日肥料と云ふものが來なくなつて、是に代るに毒が來ると云ふ話になつたから、二百圓の地面が一圓二圓になつてしまつた。
此鑛毒の害を受ける田地の種類が三ツある。第一は用水地である。第二は逆流水と申して、洪水の時に込み上げて來る逆流水が、堤防の裏に廻つて此の堤内の田畑を害す、逆流水を受ける處が十三口あります、渡良瀬沿岸三郡の中に十三口あります。斯う云ふ風に枝川は十三口あつて、水が逆さになつて來るから堤防の中に水が這入る、是が一種であります。第三は水が堤防を破つて新規に荒地を拵へるのであります。之を要するに
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