は内務省にも調べた統計がございませう。元と十時間で來たのが三時間で來る、二十時間のが七時間か八時間で達しますから、水防の準備も無い中にやつて來るB是が爲め殆ど堤防が水に堪へなくなる、疲れて堪へないかと云ふと然うでは無い、一時に來るからである。例へばコツプの水を飮む如く、徐々に飮めば幾らでも飮めるが一時に飮めば咽せる如く、堤防を壞はすことは決まつて居る。栃木縣だけの統計を見ましても驚くべきであります。栃木縣は八郡で、其の水害を受けた所が一萬九千町歩、しかも渡良瀬川沿岸三郡で其一萬九千町歩の内一萬三千町背負込んで居る。水害を受けた其内に、堤防が切れたばかりで六千十九町と云ふものが荒地になつてしまつた。此の荒地と云ふものも、尋常の荒地であれば五ヶ年十ヶ年の鍬下年限で起返りますけれども、毒が混つて居るから如何とも致方が無い。此土を悉く取片付けなければならぬ。此毒土の厚さが五寸の處もあれば一丈に及ぶ處もある、此土を取片付けなければならぬ。取片付けるには如何致す。土のやり場も何もありませぬから、畑なり田なりの片隅に土山を築いて、跡を耕地にするのですから、某困難は一と通で無い。鑛毒が這入れば其田地は
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