も前に分つて居る。今日の所は、唯今水源が乾燥して多少の土砂が流れ出る、製鑛所からも砂を流す、山からも砂が流れて來るので川が埋つた。川の埋り方も、他の利根川や鬼怒川北上川と云ふ川の埋り方と違つて、故らに土砂を流す仕懸になつて居りますから、川底が他の川々よりも急に高くなる。今日の所、後來恐れますのは、此山の崩れると云ふことが一度はあると云ふことを明言して置かなければなりませぬ。――まるで取締らぬでは無い、伐つた跡に木を植へろと云ふ命令を下してある。七千町の木を伐つた時に命令を下して、今日いくら植へてあるかと云ふと、五十三町しか植へてない。たとひ殘らず植へましても、其木が大きくなつて山が崩れないやうになるには、百年を待たなければならぬ。斯樣に鑛業人が先づ其責任を盡ュさない。其故に去七月中のこと、是は御話が枝に渉りますけれ共、群馬栃木兩縣の縣會議員で氣の付くものが寄合して、渡良瀬川は前途非常な災害があるから、堤防[#「堤防」は底本では「堤坊」]を新築するか増築するか或は延長するか如何にか工夫を取らなければ、如何なる災害に遇ふやも知れぬと云ふて評議して居りますと、超へて九月八日の大水、是が非常の
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