二十銭)、寝かして置いても店の飾りに成り、或はイツカ風来の客に揃い物として高売りのできる事もあろうかと、小い古本屋共がアテなしに買ったからである
近頃新たに出た円本もヤハリ同じ運命に陥ってツブシの原料に成るであろう
萌出るも枯るるも同じ野辺の草
いずれか秋にあわで果るべき
ハヤリ物にロクなものなし
「流行物にロクなものなし」とはよくも云った古諺である、明治時代の蘭や万年青《おもと》、兎や狆、往年の鶉など、数十円数百円に売買されたものが、今はドーであるか、近くは小鳥飼の流行を見たであろう、一羽七十円のセキセイが今は一銭、二三十円の十姉妹が五厘という下落相場、それも買人《かいて》なし貰人《もらいて》もなしで、山に放ち野に放ちであるそうな、先日大阪から飛行機に乗って上京した柳屋主人の談が面白い
「小鳥はタダでやると云っても餌代がかかるので貰人がない、殺して焼鳥にしてもウマクない、そこで鳥箱の入口を開て、飛出し飛入り勝手次第という事にして置くと、朝出た二羽の十姉妹が夕方に五六羽のナカマを連れて来て同じ鳥屋で眠り、翌朝は其七八羽が飛出して夕方に十羽以上で帰って来るそうです、放たれて籠まで安売り
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