遊里に耽溺して居るとか、住家を建築したとか聴いては、普通の人情として嫉み根性を起したり、羨しがるのは無理ならぬ事であるが、そんな劣等感情でなくして危険な反感を持つ人々が、有識階級連の間に多い
真面目に修養して最高の学府を出た者が、日々勤務して月俸百円とか二百円、或は十年二十年、刻苦研鑽を重ねて立派な学者に成った者が、月収僅かに幾十円というのが世間に多い、否それが現代の実状実相である、此連中には世俗に超越した無関心の人々も多いが、中には印税成金の事を聴いて、馬鹿/\しい世の中である、此不公平を打破せねばならぬと、所謂赤化しつつある人も少くない、ここに想到すれば、国家主義の上よりしても円本出版屋を掃蕩せずばなるまい、嗚呼
円助芸者と円本芸者
明治時代に円助という語はあったが、円本という語はなかった、円本という語は円タクと同く、昭和新時代の新熟語である、明治旧時代の円助芸者は一円札でコロブ(売淫)という意義、昭和新時代の円本書肆が一円本でコロブ(破産)という事になれば好一対
此駄洒落を聴いた座中の一人が、東京牛込神楽坂には円本芸者というのがあろと告げ、円本成金に愛されて居る芸妓ということだ
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