につむじ風が起つて自分はぐる/\廻轉して
道の眞中に立止つてしまつた。
女はそんな事には關係も無く
そろ/\と自分の側を通り過ぎた。
あゝその姿のいたましさ
瘠せ衰へ、
脊の小供の重さにおしつぶされたやうに首をうなだれ
幾日も幾日も湯に入らないので垢が白く粉をふいてしまつた
頸筋をあらはし
生れてから油をつけた事はないやうに髮は亂れて前へ垂れ
川尻の塵捨場の山の中にあるやうな
すり減つた下駄をはき
竹の杖をつき乍ら、うつむいて
この春に出逢ふのが面目ないやうに歩いてゆく
眼が見え無いのだ。
貧はこの女の眼までも奪はうとしてゐるのか
それは日の目を見る事が痛くて出來ないのだ
天を見無いで、地面許り見てゐる
脊に眠る小供におしつけられて首ものばせず
腰は極端な謙遜で曲つてゐる
冬中どうしてしのいで來たのか
その半ば盲目の母の手を
亂髮のしかしいゝ顏をした負けぬ氣性の眉宇に現はれた男の子が、
(天はこの子にこの立派な面魂をせめてさづけたのか)。
手をひいて歩いてゆく
脊の小供は眠つて居る。
自分は突差に袂にある僅か七錢の金を手に握つた
然うして見え隱れあとをつけた。
然し三人の親子は自分があ
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