の隅に息が絶えたやうにひつついてゐる
まるで小さく、うしろ向きで。
母は祕密を見せない樣に
小供をつかまへるとすばやく着物で包んでしまふ。
[#地から1字上げ](一九一八、三、使命所載)

  月の光

天地も人も寐鎭る
底無しの闇の中に
どこからか音も無く
ボンヤリと月の光りが落ちて來た。
巨人の衣の裾が天上からうつかりずつて居る樣に
貧しい家の屋根の上に
皺をつくつてだらりと垂れて居た。

  泣いてゆく子供

原の隅を
二人の小供が泣いて行く
喧嘩した二人が
同じ樣に泣いて
晝間のふくろのやうに煩さく、苦るしく
泣いては止め
止めては泣き
何がそんなに悲しいのか
急につまら無くなつたのか
仲善く日當で遊んで居たのに
二人とも同じ方へ
一人が先きになり
一人が後になり
どつちが、いゝのか惡いのか
どつちも同じ位に泣いて
晝間のふくろのやうに煩さく、苦るしく、むし暑く
一人が泣くと止めた方が思ひ出した樣に泣き初め
まるで呼び交はし乍ら
かけ出しもしないで、ゆつくりと
だん/\遠ざかつてゆく
あとからゾロ/\泣かない小供がつまらな相に、
皆んなとむらひでも送る樣に
默つてついてゆく

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