自由自在に心のゆくまゝにやつては止める
朗らかに歌ひ終る
まつたく天品だ。
「鶯は人を喜ばせる爲めに啼いてゐるのですよ」
と俺の妻が分のわからない小供に話してゐる。本當だ、
今に俺の詩もさうなるよと俺は思ふ
鶯よ、御前は飽きもしないで、同じ事をくりかへして居る
朝から少しも疲れもせずに、日の永い一日、
内氣なお前は姿も見せずに
大きな自然の中で
靜かさを一杯身の内に吸ひ込んで
氣が向くと、休んでは心をこめて歌ひ出す
未だそこにゐたのかと思ふ。

一日一日御前の聲は美くしくなる
一日一日調和して來る春景色の中で
御前の聲は強くなる。勵んで來る
だん/\自信がついて來る。
いつも勉強な鶯よ、
御前は短い春をあせりもしないで毎日根氣よく
同じ事をうたつてゐるね。

  祕密

小供は眠る時
裸になつた嬉しさに
籠を飛び出した小鳥か
魔法の箱を飛び出した王子のやうに
家の中を非常な勢ひでかけ廻る。
襖でも壁でも何にでも頭でも手でも尻でもぶつけて
冷たい空氣にぢかに觸れた嬉しさにかけ廻る

母が小さな寢卷をもつてうしろから追ひかける。
裸になると小供は妖精のやうに痩せてゐる
追ひつめられて壁
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