かるみへ靜かに消えてゆく、
輕く、淡く、重く
鼻の先や眼の先きを
見えたり隱れたりし乍ら人々の行き交ふ中に降つて來る。
往來はます/\ゴタついて混亂の美を呈し
空氣も嬉し相にそこだけ光つて流れる。
人が重り合つて行き來する。
[#地から1字上げ](一九一七、二、二八、太洋の岸邊所載)
鶯
此頃どこか近所に住んで居る鶯が裏の空地へ來ては頻りに啼く
いつもたつた一羽切りで
朝から晝過ぎまで
朝らしい氣持を失はないで
疲れもしないで啼いてゐる。
その聲を聞くといつも感心する
耳を傾けずにはゐられない
時々休んで止めては
間を置いてから落着いてゆつくりと
沈默の中から自ら開けて來る樣に
奧深いところで靜かに啼き初める。
恥しいのでうぶな姿を茂みに潜ませて
聞き手が沈默してゐるのを知つてゐる樣に啼き出す
耳の故かも知れないが
啼き初める時の二言三言は未だ少し下手だ。
然しすぐ調子を張りあげる。
もう誇をもつて啼く、臆した心が消えてゆく
夢中になる。止めるかと思ふと長くつゞけたりする
短いけれど複雜な歌をうたふ
枝の上から身を逆まにして落ちて來る樣に啼いたり間を打つて、
沈んだやうに嘆いた
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