前の泥海を越すのに弱つてゐる。
道の上にはあつち、こつちに一杯の人だ
後向きの人や前向きの人が傘の下で横肥りにひろがつて動いてゐる。
小さい小豆色の洋犬が首を前へ垂れて、
後ろ足をぬかるみに引張られて歩きにく相に道を横切つてゆく、
友達を訪ねてさん/″\朝から遊び散らしてくたびれたと云ふ恰好だ。
町の角には傘をさして小供をおんぶした
女が家から出て嬉し相に見てゐる
脊中の小供に顏を横向きにして話してゐる。
人の居無いところは靜かで不氣味だ。
空は何か含んだ樣にうす暗い
然し往來は面白い、
通る人々は普段見られ無い情熱が透いて見える
日暮れになると町の樣子が變つて來る
雪は盛んに降つて來る
空氣が冷たくなり、濃くなつて來る
眼に見える樣に光つて往來を流れ出す
その中を人通りが盛んになる。
町の景色はリズムを生じて來る。
行き交ふ人は寒さと雪に景氣をつけられて興奮して通る
雪は濃厚の空氣の中に
風が無いので一直線に降りて來る
一緒にかたまつて降つたり
一片一片妙にゆつくりと
重たい空氣にのつかつて落ちて來る
顏を目がけて飛んで來て眞直ぐに足下へ落ちて消えてゆく
降つても降つても往來ではぬ
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