を渡つて右へ曲る
埋立てられた樣な田圃と小川の向ふは
小山になり所まだらに低い木が生えてゐる。
小川の水はキレイだ。
瀬戸物のカケラが手にとりたいやうに沈んでゐる。
鷄が馴れてゐると見えて、
一間餘りのその小川をバタ/\と飛んで向ふ岸へ移る。
自分も眞似をして山をのぼつてゆく
一面に貧民窟だ。
腹の減つたやうな亂髮の小供が澤山居て大人が見えない。
山賊の巣窟にでも來たやうな氣がする
たまに居てもこのいゝ天氣に家の中にゐる。大概の家が留守だ。
どこへ行つてゐるのかと思ふ。
家の周りにはどこでも荒繩でおしめやぼろを乾してある。
何を食つて生きてゐるのかと思ふ
どん/\通りぬける
畠の方へ行く。畠の向ふには薄い青空が輝いてゐる。
涯の無いそこから奇妙な無言の歌が響いて來る
畠の中にはぽつぽつ杉が立つてゐる。
聖い感のする恰好だ。
景色の中で懷しさが湧く
ところ/″\に百姓が働いてゐる。
眞面目に働いてゐる
どこからか人が澤山で合唱する聲が聞える
その方へ歩いて行く。
淋しい廣い天空と畠の中で
小學校の教室から聞えるのだ。
淋しい沈默した自然に向つて
叫ぶ人間の聲だ。
自然は默つて聞いてゐる
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