になつたやうに不運だが
三人一緒に世渡りして行くのだ。
皆んな哀れな此世の道連れだ。
心細い夕暮の悲しさに小猿はキイ/\啼き
女は二人で今日のまうけの事でも話し乍ら
然し少しも調子をその爲めに弛めないで
いそいでゆく、實にいそいでゆく。どこか場末の宿へ
[#地から1字上げ](一九一七、一二、二八日)

  冬の日の入り

今日は慘しい冬の日の入り
立止つて祈る人も無い破鐘が鳴る
人々は薄れて行く寒い光の中で
歩みをとゞめ無い。
皆んな孤獨で、男も女も急がしく追はれて行く
大膽な世渡りの光景だ。

  電車の隅で

電車の隅で
本を讀んで居た
未だ暮れ無い光の中に
燈が柔くついた
長い夜の來る知らせを齎らして
走るやうに柔い光が自分の心を照らした
氣がつけば電車の中は混雜して走つてゐる。
初めて見る人計り立つたり、坐つたり、一杯だ
窓の外を見れば未だ日はくれない
日は落ちようとして苦悶してゐる
荒い冬の日の中に
見知らない人々が住む屋根が
恐ろしい色をして建て竝んでゐる。
苦るしい孤獨が
自分を再び夢の中へとり戻す
病氣の快復の希望を認めたやうに
柔い燈の下にてらされて自分は夢見る。


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