から此世に生れる歡喜の姿
赤き夜の光りに輝く
母と子の笑ひの美しさ
[#地から1字上げ](一九一七、一二、三一)
[#地から1字上げ](以下十三篇、使命所載)
冬
太陽は日に日に遠くなる
急いで空を走つて行くのが眼にまで見ゆる
日はだん/\と短くなり
晝間の中から月が出る。
母體に小供がたまつた樣に凡てのものが
逆まになつて凝結して眠り
野に出て見れば小川はせつせと流れ
岸に簇る木立はすつかり葉を落し盡して一番早く大膽な眠りにつき
小鳥の聲が美しく小さく響く。
町に出て見れば
往來には人通りが減つて來た。
小供が默つて足音も無く通つた。
大膽に月の世界から來たやうに
皆んな默つて行來してゐる。
人の上にも冬が來た。
もう浮いた話は聞かれない
人はにんしんした女房の眠るのを叱ら無い夫のやうに
忠實《まめ》に働く許りだ。
神聖な眠りをさまさないやうに。
猿
自分のあとになり、先きになり
女の猿廻しが二人連れ立つて夕暮の町を歩いて行く
男のやうに筒袖を着て、白い脚絆に鞋かけ、スタ/\と歩いてゆく、
脊中に脊負つた辨當箱の上に一匹猿が横向きに乘て居る。
薄桃色の顏と同じ色の可
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