なる
あゝ眼、眼を造つたものは何だ。
寂しい處で眼を造つたものがあるのだ。
優しくしたり、恐くしたり、その眼に生氣を與へる者があるのだ。

  赤ん坊

赤ん坊は泣いて母を呼ぶ
自分の眼覺めたのを知らせる爲めに
苦るしい力強い聲で
母を呼ぶ。母を呼ぶ
深いところから世界が呼ぶやうに
此世の母を呼ぶ、母を呼ぶ

  北風

烈しい北風が吹き止んだ。
太陽が落ちると同時に
まるで申し合はせたやうに
地上のものを思はせる、確りした平和の夕暮が來た。
一層深く淨められた夕暮が來た。
惱みが鎭められたやうに。

  雪

雪が降つて世間の騷ぎが鎭つた。
人間は漸つと自分に歸つたやうな氣がする。
立派な永遠の法則に從つたやうに
同じやうな明るさと、
同じやうな靜かさが地平線の奧までひろがつて來る。
この靜さと光りの中に魂は安息と平和を得た。
永い苦るしみが忘られて、
自分等は行く道を見出したやうな氣がする。
古い地上の道は雪の中へ埋れて
新らしい道が空とぶ鳥のやうに自分等の胸に見出された。
自由と平等と安息と平和の道だ。
[#地から1字上げ](一九一七、一、二午後)

  小供

自分の小供は可愛
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