が髮を洗ふ
うまい工合に小供が早く寢たので
その隙に
臺所で火をカン/\起して湯を沸かして
ばら/\となつた髮をほどいた。
ところがあいにく櫛がめつから無い
箪笥の上の鏡臺の抽出にも火鉢の抽出にも
どこを探しても、家中探しても出て來ない
小供の目をさまさせないやうに
音をたてずに探す氣苦勞
とう/\櫛めは出て來ない
どこへ一たい隱れて居るのだ
折角御湯も沸いてゐるのに
赤ん坊もよく眠てゐるのに
とう/\妻は疳癪を起してしまつた。
とばつちりは俺に來る
俺もない/\はら/\して居たのだ。
何處かで見たやうに覺えがあるが
さて思ひ出せない
妻の探したあとを探してどなられる
可愛相に妻はとう/\本氣に腹を立てた
恐ろしい呪の言葉が口をついて出て
箪笥の上の俺の本は疊の上にぶちまけられる
自分位不運な者は無い
小供なんかいらないと恐ろしい事を云ふ
俺も負けないで賣言葉に買ひ言葉
とう/\二人は默つてしまふ。
妻は自暴半分で髮を洗ひ出す
俺は如何うかして目つけてやりたいと
親切氣を出して探し廻る音に
あいにく子供が泣き出した。
可愛相に赤ん坊は眞赤になつてすかしてもだましても泣く。
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