暫らくそこでわが兒は遊ぶ。
わが兒は歩む
あちら、こちらに寄り道して、翅を切られた鳥のやうに
幸福の足の危ふさ
向ふから屑屋が來る。
いゝ御天氣で一杯屑の集つた大きな籠を脊負つて來る。
わが兒は遠くから待ち受けて居る。
屑屋はびつくりして立止る。
わが兒は晴々見上げて居る。
屑屋は笑つて、あとからついて行く自分に挨拶をする。
『可愛ゆい顏をしてゐる。』と、
郵便配達が自轉車で來る、『あぶない』と思ふ間に、
うまく調子をとつて小供の側を、燕のやうにすりぬけて行く
わが兒はびつくりして見送つて居る
郵便配達は勢ひよく體を左右に振つて見せ
わざと自轉車をよろつかせて
曉方の星のやうに消えてゆく
わが兒は歩む。
嬉々として、もう汗だらけになつて。
掴るまいと大急ぎ
大きな犬が來る。彼よりも脊が高い
然しわが兒は驚かない、恐がら無い
喜んで見て居る。
笑ひ聲を立てゝ犬のうしろについてゆく。
わが兒は歩む、
誰にでも親しく挨拶し、關係のある無しに拘らず
通る人には誰にでも笑顏を見せる。
不機嫌な顏をした女や男が通つて
彼の挨拶に氣がつかないと
彼は不審相に悲しい顏付をして見送る
がすぐ忘れ
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