夜中、ふと目ざめ、窓に立つて行つて
外を覗けば、壯麗無比の宴會は開かれて居る。
もう餘程前から開かれて居るらしい。
多くの人は皆んな妻も子も親も兄弟も友人も無數の知人も
打ち連れて早くから行つて居るらしい、
自分はこの招待の日を忘れて居た事を思ひ出して悔やしくなる。
もう今から行つても遲い氣がする。宴會は下火らしい。
いや今が絶頂かも知れ無い。自分は一人窓に佇んで見る。
木は一杯魚のひそんだ大きな藻のやうに
靜かに光を放つて溌剌として入り亂れ
一夜の中に凡ての美を焦燼し切るやうに
優しく強き姿をして整然と佇み
全世界から美の粹を集めた星は少し赤味を帶びて輝き競つて舞踏し
夜の更けたのを知らせるやうに
少し疲れた歡樂の宴の再び勢ひを新たにつけられるやうに
風も無いのに落葉の音は
一齊に起る拍手のやうに空中に入り亂れ觸れ合つて
無數の細かな音を發し
幾度も幾度も同じ事がくりかへされ
宴會は更に絶頂へ至りつくやうに
あり餘るところから新に酒肴が運び出されたやうに
一氣に何倍も光りが加へられ
燈の數は増され
夜のふくるまで壯麗無比の宴會はつゞく
自分はもう招ぎに遲れたのを悔やまない
自分はそれ
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