りした。
或日もう夕方近く、
三人は大きな邸の裏庭のあらはに見える道に出た。
自分は妻の疲れをいたはつて話し乍ら、
どつちへ行かうか迷つて居た、
その時ゆくり無く
自分の眼には
冬枯のさびれた裏庭の隅に
疎らな木立を透かして
ガラス張りの大きな白い温室が少し靄に包れて
無人島に漂泊した人の憔衰した眼に
偶※[#二の字点、1−2−22]暗い沖を通過する白い朦朧とした汽船を見出した喜びのやうに、
靜かに暖い美の姿を現はした。
自分はびつくりしてはつきりは見なかつた。
その必要はなかつた。
幻で澤山だ。自分は再びそれを見るのが苦るしかつた
眼を反らした。
自分は妻を顧みて身顫ひをして
「仕事がしたい」と叫んだ
妻は疲れた顏をして默つて自分を見上げた
然うして二人は庭の垣に添つた道を通り過ぎた。
自分の頭には女のやうな白い温室が殘つた
それは人の目に屆かない、觸れ無いところに
靜かに露骨に立つた孤獨な姿だ。
人の世を離れて安らかに生きてゐる美に包れた幸福の姿だ。[#地から1字上げ](十一月十八日)

  三人の子供

三人の子供が
原ぱで泥いぢりをして居る。
穴を掘つてその周りに立つたりしやが
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