力よ
かくして亂雜な背景はとりかへられ
騷ぎしづまれば
月も星も高いところにはね上り
天と地は整然とへだてられてしまふ。
[#地から1字上げ](十一月二十三日)

  星

夜ハガキを出しに
子供を抱いて往來に出た
郵便局の屋根の向ふの
暗闇の底から
星が一つ青々と炎えて自分の胸に光りをともした
自分は優しい力を感じた、氣丈夫に感じた
宇宙を通して火はめぐつて居るのを感じた
至る處に優しい力がまき散らされてゐるのを感じた
自分の内と星は同じ火でつくられ、同じ法則に從つてゐると思つた
暗闇の底にある遠い星も自分で動かす事が出來る
優しい力で動かす事が出來る。

  往來で

町を歩けば
何か自分を貫いて來る
行き交ふ凡ての人の運動の中を
無言の挨拶が貫いて居る。
思はず自分は後しざりして歩いて行く
或る力が自分を押し流す。
子供の時
丸い團子を描いて
それを串を描いてさし通すのが變に面白かつた。
一氣にうまくさし通せば喜んだ。
同じ事を幾度くりかへしても面白かつた。
あの手應へを感じる。

  白い温室

自分は妻と子供と三人で
まる三日間、かし家を探して歩いた。
何處にも無いのでがつか
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