それを見乍らどうして地球は圓いか話し合つてゐた、
弟や妹は今晩曲馬へ來たがつた。
自分をせびつた、
自分は斷るのが可愛相な氣がした。
棧敷にはだんだん人が殖えた。
それ等の人を見ると自分は恥しい氣がした。
小供をつれて入つてゆくのが恥しい氣がした、
自分は赤い顏をした。
弟や妹をごまかして歸りかけた。
二人は自分の手に兩方からぶら下つた。
自分は淋しくなつた。涙ぐんだ。
自分はうしろに賑やかな然し悲しい樂隊を聞き、
札賣りのどなる聲を聞き乍ら
何かに襲はれるやうに坂を下つた。
門が見えると
弟も妹も自分の手を離れて一目散にかけて行つた。
自分は淋しく苦るしかつた。死んだ弟の事を思ひ出した。
自分もうしろから家をめがけて馳け出した。
[#地から1字上げ](一〇、一三夕)

  創作家の喜び

見えて來る時の喜び、
それを知ら無い奴は創作家では無い
平常は生きてゐても、本當ではない
自分の内のものが生きる喜びだ。
自分の内の自然、或は人類が生きる喜びだ。
創作家は、その喜びの使ひだ。

  初めて小供を

初めて小供を
草原で地の上に下ろして立たした時
小供は下許り向いて、
立つたり、し
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