してしまったので、ちょうど、古くは「い」は母音の「イ」であり、「ゐ」は「ウィ」という音であったが、段々区別がなくなって共に同じ「イ」の音となって「い」と「ゐ」を混同するようになったと同じように、発音の時代的変遷であったと見ればよく判る訳であります。そういう点から見ても、発音の区別に基づく仮名の用法上の区別であろうと思います。そうして、現に「エ」の仮名における二類の別に関しては、ア行の「エ」と、ヤ行の「エ」の区別であるということは、前に述べた『衣延弁』以来の研究によって既に明瞭になっているのであって、これは明らかに発音の区別であります。十三の仮名の中、たった一つではありますけれども、「エ」については明瞭に発音の区別であるということが認められているのでありますから、他の十二の仮名においても、何かしら発音の区別であるということは大概推測されると思います。
 なおまた「エ」を除いた十二の仮名を五十音図に当ててみると、イの段に三つ(キ、ヒ、ミ)、エの段に三つ(ケ、へ、メ)、オの段に六つ(コ、ソ、ト、ノ、ヨ、ロ)あります。つまり、イ、エ、オの三つの段だけにあって、ア、ウの段には一つもありませぬ。こ
前へ 次へ
全124ページ中88ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
橋本 進吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング