の音、口を余り開かないで言う「ア」の音、そういう音は日本人の耳にはどちらも同じ音と聞くのです。普通日本人は皆そうだろうと思いますが、英国人などはそれを違った音として区別して聴くのであります。marketとmatchとmuchのmar− ma− mu−の部分は英国人はそれぞれ別の音として聞き、これを違えれば意味も違って来ますが、日本人は同じ「マ」の音として聴くのであります。かような音の異同はそれを使っている人について聞いてみれば解る訳で、さようにして調べれば、その言語ではどれだけの音を違った音として聴き分けるかということがわかるはずです。その音の数は同じ言語でも時代によりまた土地によって違うもので、同じ日本語でも一口には言えない。例えば「エ」と「イ」の区別は日本でも処によっては判らず、「イシ」だか「エシ」だか区別が付かない処がある。であるからそれぞれの土地の言語について別々に考えてみなければならぬのでありますが、或る一地方の言語においては、その言語に用いる違った音の数というものはきまっている。その一定数の違った音を色々に組合せてその言語は出来上っているのであります。つまりそれらの音を色々
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