仮名は後世の「こ」に当る仮名であるということにしかならないのであります。ところが龍麿が調べてみると「許」と「古」は『古事記』においては立派に区別せられていて、単に「彦《ヒコ》」なら「彦《ヒコ》」という語においてそのコにいつも「古」を用いて「許」を用いないというだけではなくして、我々がコと読んでいる一切の語の中において、或る語には「許」を書いて「古」を書かない。或る語には「古」を書いて「許」を書かない。例えば「子《コ》」、「彦《ヒコ》」のコは「古」を書いて「許」を書かない。「心《ココロ》」のコは「許」を書いて「古」は書かないというように、あらゆる「こ」を含んでいる語が「許」を書くか「古」を書くかの二つに分れている。また「こ」にあたる万葉仮名の方も多くの仮名があるが、それが二つにわかれて、
古――故、固、枯、孤、庫
などは「古」と同じように用いられ、
許――己、去、巨、拠、居
などは「許」と同じように用いられ、しかも、「古」の類と「許」の類とは決して同じに用いることなく、この二つの類の間には、はっきりした区別があるということがわかったのであります。これまでは、両方ともすべて「こ」の
前へ
次へ
全124ページ中54ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
橋本 進吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング