ることは出来ないのである、すなわち、変体仮名は互いに通用するものであり、四十七種は互いに通用しないものであるというように我々は考えている。ところが実際において、我々がこの四十七の中で同じように発音しているものが三つある。この三つは仮名遣《かなづかい》の上では区別しているけれども、実際の発音から見ると同じであって区別することは出来ない。ところが、そういうものも古い時代の文字の用法を見るとやはり区別してある。ア行の「イ」とワ行の「ヰ」という風に、我々の耳に聴いては判らないが、昔の人の書いたものにはちゃんと明瞭に書き分けてあるということが、契沖阿闍梨《けいちゅうあじゃり》の研究によって明らかになった。それから「いろは」と相並んでやはり音の区別を表にしたいわゆる五十音図がありますが、これと「いろは」とを比べてみると三つだけ多くなっていて、仮名では同じに書く三つの仮名が、それぞれ二つにわかれて違った所に入っている。すなわちア行の「イ」とヤ行の「イ」と、ア行の「エ」とヤ行の「エ」と、ア行の「ウ」とワ行の「ウ」と、この三つは仮名の形は同じでありながら二箇所に分れて出ている。それで「いろは」に比べると
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