三つだけ多くなって五十になっている。これらの仮名は、我々は仮名としては別なものとしては考えていないのでありますが、しかしそういうものも、ずっと古い時代においては何か区別せられていはしないかということを問題にして、古い時代における仮名、すなわち万葉仮名の用例をあつめて、「イ」(ワ行の「ヰ」でなく)に当るあらゆる万葉仮名がどういう語に用いられているかということを調べてみると、それらはいずれも区別なく同じように用いられていることがわかり、それから「ウ」も「ウ」に当るべき万葉仮名を用いてある語をずっと調べてみると、これらの仮名はどういう語においても皆同じように用いられて、区別がないことがわかったが、ただ「エ」に当る万葉仮名だけは二類にわかれて互いに区別せられているのであって、ア行の「エ」とヤ行の「エ」と違った文字が用いてあり、語によってどちらの゛の仮名を使うということがちゃんと定《き》まっているということが発見されたのであります。それが奥村栄実《おくむらてるざね》の『古言衣延弁《こげんええべん》』の研究であります。そうして、契沖の研究によって仮名の用法上区別があることが明らかになった「い」「え
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