l段の已然形に用いるものを乙と名づけることとすれば、「ケ」の乙、「メ」の乙、「へ」の乙という類が認められるわけです。
 かように、「キ、ヒ、ミ」も「ケ、へ、メ」も皆一つ一つが二類に分れて、そのおのおのの類が皆違った発音であったと思われるのですが、それが皆甲乙の二つの類にわかれて、仮名の違いにかかわらず、同じ種類の活用の同じ活用形には、その甲類は甲類同志相伴って用いられ、乙類はまた乙類同志相伴って用いられているのであります。
 次に下二段活用ですが、ここにも「ケ、へ、メ」があらわれます。
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カ行下二段ハ行下二段マ行下二段[#表ここまで]
 下二段の未然形、連用形、命令形に「ケ、へ、メ」の仮名が出て来ますが、この仮名は四段已然形と同類のもので、すなわちいずれも「ケ、へ、メ」の乙の類を用いて、甲の類は決して用いません。すなわち、ここにも、乙類が相伴って同じ活用形に、あらわれて来ます。
 それから上一段活用には「キ、ヒ、ミ」の仮名があります。
[#ここから二字下げて表]
カ行上一段ハ行上一段マ行上一段[#表ここまで]
 上一段では、あらゆる活用形に「キ、ヒ、ミ」があり
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