の句は、近代生活の明るさ華やかさ気分等を取扱って、明らかに思想生活の明暗二方面を描き出している。

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お手打の夫婦なりしを衣更   蕪村
あるほどの伊達しつくして紙衣かな   園女
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など、昔の戯曲的な中にも太平のゆとりある句に比較して、著しい時代の差異を見る。切迫強烈深刻は近代のものである。

     二 近代写生の特色

 (1)[#「(1)」は縦中横] 複雑繊細な写生句[#「複雑繊細な写生句」に傍点]
 写生の進歩は次第に複雑繊細。写生それ自身に価値をおく様な句が殖えてきた。事物の真の実在を凝視し、力づよく明確に写す事に努力し、従って余韻とかゆとりに乏しい。

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(イ)[#「(イ)」は縦中横]うすものかけし屏風に透きて歌麿絵   みどり
(ロ)[#「(ロ)」は縦中横]枯柳に来し鳥吹かれ飛びにけり   久女
(ハ)[#「(ハ)」は縦中横]せり上げの菊人形やゆらぎつつ   妙子
[#ここで字下げ終わり]

 (イ)[#「(イ)」は縦中横]、屏風に打かけた薄物をすけて歌麿の美人画がまざまざと美しく透き見ゆる、という
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