げ]
母に似し眉うれしけれ冬鏡   みさ子
炭ついでいつかしみ/″\と語りけり   同
木の芽雨母おうて傘まゐらせぬ   同
[#ここで字下げ終わり]

等、一生を父母の慈愛に生き、すなおな落付をもて、女らしいしとやかな佳句をのこしている。
 より江氏[#「より江氏」に傍点]は後期雑詠時代に一人舞台で、活躍していられる故、のちにゆずり、ただ

[#ここから2字下げ]
枯菊に尚愛憎や紅と黄と   より江
秋風にやりし子猫のたよりきく   同
[#ここで字下げ終わり]
の二句に氏のデリケートな性格、あくどい悩や執着のないさらりとした明るさを見る。

[#ここから2字下げ]
春菊にみより少き忌日かな   和香女[#「和香女」に傍点]
ひとりすむや行水の間を閂かけて   すみ女[#「すみ女」に傍点]
[#ここで字下げ終わり]

 共にさみしい境遇心持をあらわし、

[#ここから2字下げ]
寒菊にいぢけてをれば限りなし   みどり
草箒木どれも坊主や返り花   同
[#ここで字下げ終わり]

 みどり女氏[#「みどり女氏」に傍点]の明るさ、元気よさがそのまま出ているし、

[#ここから2字下げ]
前へ 次へ
全28ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
杉田 久女 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング