分をのせて走らせている。行てには華かな芝居の色彩と享楽的な濃い幻想。これこそ華かな都会の情調の句である。
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(ホ)[#「(ホ)」は縦中横]三井銀行の扉の秋風をついて出し 静廼
(ヘ)[#「(ヘ)」は縦中横]雪をおとしてドサと着きけり丸善の荷 茅花
(ト)[#「(ト)」は縦中横]初鮭や部下のアイヌの兵士より みどり
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三井銀行の大建築の重い扉を押しあけて外へ出た刹那の感じを巧みにとらえている。(ヘ)[#「(ヘ)」は縦中横]は東京の丸善から北越の雪深い町へ或日とどいた荷物が、土間に雪をはらい落して配達されたと云う瞬間の光景を写生して、近代生活の一地方色を出している。初鮭の北海道らしい地方色。之等はいずれも事実を有るがままに切り取り来って写生した、近代生活の断片記録であり、自己観照からなる純客観句である。電灯戯曲手紙銀行人力車等も近代生活のうみ出した材料である。
(2)[#「(2)」は縦中横] 近代風俗をよめる句[#「近代風俗をよめる句」に傍点]
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(イ)[#「(イ)」は縦中横]福引や花瓶の前の知事夫人
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