り]

 花讃女のとりすました悟りがましい主観の少し厭味らしき。羽紅女の剃髪した時の感慨ぶかさ。麦秋の一村落の、おおまかさに比し近代句はいずれも写実で光景を出している。

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手袋ぬぐや指輪の玉のうすぐもり   静廼
ゆく春や珠いつぬけし手の指輪   久女
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 (8)[#「(8)」は縦中横] 活動的描写[#「活動的描写」に傍点]
 此の時代の写生は殆どすべてが動的の写生句であるともいってよいが、

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よりそへどとてもぬるるよ夕立傘   みどり
葉鶏頭のいだゞきおどる驟雨かな   久女
風あらく石鹸玉とぶ早さかな   すみ女
襟巻のとんで長しや橋の上   あふひ
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の如き夕立の激しさ、風のつよさをも説明ぬきの刹那的写生で活かしている。

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かるた札おどりおちけりはしご段   和香女
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の如きも一枚のかるた札がはね飛ばされて梯子段を勢いよくおちてゆく瞬間の写生で有る。

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打水やずんずんいくる紅の花   静廼
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