終わり]
春帯をときすてて崩れる如く座っている女と、その周囲の帯との色彩を写生し、柱にぬぎかけた花衣が、衣のおもみにずりおちて柱のもとにたくなっている妖艶さ。花見から戻ってきた女が、花衣を一枚一枚はぎおとす時、腰にしめている色々の紐が、ぬぐ衣にまつわりつくのを小うるさい様な、又花を見てきた甘い疲れぎみもあって、その動作の印象と、複雑な色彩美を耽美的に大胆に言い放っている。それから婦人でなくては親しめぬ材料の簪櫛指輪などの句。
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ざら/\と櫛にありけり花埃 みどり
稲刈るや刈株にうく花簪 菊女
春泥に光り沈みし簪かな かな女
簪のみさしかえて髪や夜桜に みさ子
茄子もぐや日をてりかへす櫛の峰 久女
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一枚の櫛にざらざらうく花ぼこり。春泥にきらりとぬけおちて光り沈む銀簪。夜桜見にゆく乙女の簪。稲刈る女の花簪が刈株にういて引かかっている光景。いずれも女でなくては。
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簪よ櫛よさて世はあつい事 花讃女
笄も櫛も昔やちり椿 羽紅女
麦秋や櫛さへもたぬ一在所 花讃女
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