に配せる昔の情景句に比して近代句は動的であり精緻をきわめている。
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葡萄粒をわたりくねれる毛虫かな あふひ
怒り蛇の身ほそく立ちし赤さかな 同
白豚や秋日にすいて耳血色 久女
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美しい葡萄粒を這いくねる毛虫。鎌首をあげ身細く怒り立つ蛇の赤さ、秋日にすきとおる白豚の耳の真紅色。従来醜しと怖れられ、厭われた動物をも凝視し忠実にそのものの特質、詩美を見出そうとつとめている。
(4)[#「(4)」は縦中横] 静物写生[#「静物写生」に傍点]
一個の林檎なり花なりの色彩形襞陰影等、事物の真に感興をもって、繊細如実に描出するのが前期時代静物写生である。
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いたゞきにぼやけし実やな枯芙蓉 みさ子
大輪のあと莟なし冬のばら 同
白萩のこま/\こぼれつくしけり せん女
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枯芙蓉のいただきがぼやけている実。冬ばらの大輪が咲いたあとに莟もない事を見出し、白萩のこまこまと散りしいた有様、之らは久しく花なり実なりを忠実に観察し初めて読み出でた句であって、他に何らの景物もなく一本の枯
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