芙蓉、大輪の冬ばら、それぞれの性質を描き分けている。
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水嵩に車はげしや藤の花 多代女
うきことに馴れて雪間の嫁菜かな すて女
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多代女は、水嵩に水車が激しくめぐっている山川らしい風景。すて女は女性の苦労にたゆる辛棒づよさを雪間の嫁菜にふくませてよみ、藤、嫁菜は一幅の景なり、一句の主観を表現する一つの手段として取扱われている所、大正写生と異る。
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茸城や連り走る茸の傘 操女
松茸や地をかぎ歩く寺の犬 星布
初茸の香にふり出す小雨かな 智月
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元禄の句、初茸は目にうつり来ず、小雨のふり出した茸山の感じをよみ、天明のは、地をかぎ歩るく寺の犬をつれ出して、茸狩の光景を描写し、大正の操女は、連り走る如く大小の茸が傘をならべてむれ生えている茸城を目に見る如く印象的に写生して、俳画の如き面白味を見せている。
(5)[#「(5)」は縦中横] 人体の部分写生[#「人体の部分写生」に傍点]
レオナルド・ダ・ヴィンチの名画、モナリザの永遠の謎の微笑を、唇、額、目という風に部分的に
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