期の句で之も芋のせい籠にくる蝶の長閑さを主としている。所が花大根の句に到ると、ただ純白の花の上に今し漆黒な蝶が翅をあげてとまった、その動中の一ポイントを捉まえ、一瞬間の姿を活動的に描いた点が新らしい写生句である。次の凍蝶と病蝶とを対比するに凍て蝶が散りしく葉桜の霜に横わっている光景よりも桜の霜を身の終りとして凍ったという作者の蝶をいたむ主観が勝っている。一方のは石上に翅を平らにして、もはや飛ぶ力もない病蝶をじっと凝視している。病蝶に対する何らの主観も読まず、只目に映じる色彩、形、実在の真を明確に描写せんと努力するのみである。秋蝶の句は漆黒にうすれた秋蝶の性質を写す。

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灯取虫うづまくと見し目に花一輪   あふひ
灯におぢて鳴かず広葉の虫の髭   せん女
盃をとりやる中や灯取虫   多代女
月代や時雨の中の虫の声   千代女
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 灯取虫が灯の周囲をめまぐるしく渦巻くよと見ている目に、赤い花一輪が映ったという瞬間的写生で、中七字に近代的特色を見る。動かぬ広葉の虫の髭に目をとめる写生句。之を、灯取虫に盃のやりとりを配し、時雨の中の虫時雨を月代
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